堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 三人は給仕から飲み物を受け取ると、それに口をつけながら談笑する。アレックスが重々しくベルニスの護衛と言っていたが、結局はこうやって彼女と一緒にいるだけ。しかもドロシーも一緒にいるから、ただの歓談にも見えなくもない。ただ、顔の広いドロシーはいろんな人から呼ばれる。エレオノーラはたびたびベルニスと二人きりになる。そうなると彼女は頬を赤らめて俯いているだけ。

「ベルさん、もしかして疲れてしまいましたか? あちらのお部屋でお休みしましょう」
 エレオノーラが柔らかく笑うと、それに安心したのか、ベルニスも頷いた。

「あの、せっかくの卒業パーティなのに、ごめんなさい」
 別室のソファでゆったりと座っていると、ベルニスがそんなことを言う。

「え、っと。気にしないでください。私もあのようなところは得意ではないので」
 はにかみながらエレオノーラが言うと、ベルニスもほっと、一息つく。

「そう思っているのは私だけではないと知って、安心しました」

「会長が戻って来るまでこちらで待っていましょう」
 ベルニスは「はい」と言うものの、エレオノーラが口にした「会長」という言葉で少し顔を歪めた。

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