花笑ふ、消え惑ふ
「わかった。帰るぞ総司」
びっくりしたのは流だけじゃない。
あっさりと話を切り上げて歩き出した土方を、総司はさすがに止めようとした。
「土方さん。罪人ですよ」
「罪人だな」
「始末しなくていいんですか」
「べつにいいんじゃねーの、今は」
「なに言ってんですか」
「こいつが死にたいって言ったら、そのときはすぐに殺せばいい」
なんてことない顔で言ってのけた土方に、総司はぐっと言葉につまった。
「っ……彼女の存在ははっきり言って脅威です。さっき土方さんが言ったみたいに、かならず誰かを犠牲にしなくちゃいけない。この京を、守るべき人々をあんたは見殺しにするんですか」
「本人がそれでいいって言ってんだ。好きにさせてやれ」
総司が絶句する様子がこちらまで伝わってくる。
なにを言われても動じずに、そして淡々と言葉を返している土方は、ふと空を仰いだ。
流もあとを追うように顔をあげる。
今夜は月が大きかった。
──────満月だ。