花笑ふ、消え惑ふ
ひらいた口は、言葉になる前に閉じる。
上げた視線は、また下を向いてしまう。
「……死にたくない、です」
消え入るように小さくなった声を、はたして土方は拾ってくれただろうか。
流は心配になり、顔をあげてもう一度「生きたいです」と言い直した。
総司の笑顔もとうに消え、じっと流たちを静観している。
そのうち土方は重々しく口をひらいた。
「自分のせいで他人が死ぬとしても、お前は生きたいと言えるのか」
「……!」
「誰かを犠牲にしてもいいということか?」
「意地悪な聞き方だなぁ」
総司が肩をすくめたが、流がなんと答えるのか興味深そうでもある。
ふたり分の視線を受けながら、流はぐっと胸の前で拳を握りしめた。
「……それでも、生きたいんです。だって、わたしは」
わたしはまだ、
……──────…てない。
今度こそ、最後のほうはなにを言ったのか聞き取られなかっただろう。
流は自分でもなにを呟いたのかわからなかった。
ただ、喉の奥がひどくひりついていた。
恐怖よりもずっと。それは胸が締めつけられるような痛みだった。