花笑ふ、消え惑ふ
一瞬、しんとした静寂に包み込まれる。
最初にゆるりと手をあげたのは、それまでうたた寝をしていた永倉だった。
「いーよ、俺はさんせー」
「オレもオレも!なんか面白そーだし!てか新さんいつ起きたわけ?」
それに続いて元気よく手をあげたのが平助。寝起きの永倉をからかうように、ぼんやりしているその顔をつんつんしている。
「僕も……みんながいいなら、賛成するよ」
「とかいって山南さん、土方さんが怖いんだろ」
「ちょ、しーっ、平助!」
おどおどしながらそう言ったのは、眼鏡をかけた大人しそうな男。
山南と呼ばれる彼はどうやら土方のことが苦手らしい。
流も、苦手とまではいかないが、土方のことをすこし怖いとは思っていたので、山南に対してなんだか親近感が湧いた。
「そ、総司と斎藤君は?」
誤魔化すように山南はふたりに矛先を向けた。
「……異論はない」
ここまで流を案内してくれた男は斎藤というらしい。
斎藤はそれだけ言って、また口を閉ざした。
あとは総司だけ。
総司は流ではなく土方を恨めしそうに見やると、渋々といったようにうなずいた。
「どうせぼくがなに言っても、そこの人、聞かないだろうし」