花笑ふ、消え惑ふ
「寝てるとき、とか。あんまり気が抜けなくて」
“小童が生意気に布団を使うもんじゃないよ”
“はやく起きな。いつまで寝てるのさ”
安心できるどころか、まだ誰も起きていない明け方に身体を蹴られたこともあった。
布団の枚数は足りていたのに、生意気だから使うなと言われ、端へ追いやられたりもした。
それ以来、流は自分の身を守るために隅っこで座ったまま寝るようになった。
それが流の処世術だった。
それでよかった────……いままでは。
「てめぇは……」
「え、……わぷっ」
押しつけられたのは、ふわふわした布団。
そこから顔を出すと土方がこちらを見おろしていた。
「なんのために相部屋になったと思ってんだ」
「えっと…わたしが女で……他の人たちに悪さをしないように?」
そう言うと、土方は「それもあるが」と前置きをしてから続けた。
「てめぇが安心して寝られるようにだろーが」