花笑ふ、消え惑ふ


「寝てるとき、とか。あんまり気が抜けなくて」



“小童が生意気に布団を使うもんじゃないよ”


“はやく起きな。いつまで寝てるのさ”



安心できるどころか、まだ誰も起きていない明け方に身体を蹴られたこともあった。


布団の枚数は足りていたのに、生意気だから使うなと言われ、端へ追いやられたりもした。


それ以来、流は自分の身を守るために隅っこで座ったまま寝るようになった。


それが流の処世術だった。


それでよかった────……いままでは。




「てめぇは……」

「え、……わぷっ」


押しつけられたのは、ふわふわした布団。


そこから顔を出すと土方がこちらを見おろしていた。




「なんのために相部屋になったと思ってんだ」

「えっと…わたしが女で……他の人たちに悪さをしないように?」


そう言うと、土方は「それもあるが」と前置きをしてから続けた。





「てめぇが安心して寝られるようにだろーが」


< 59 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop