花笑ふ、消え惑ふ
「……わたしは、どうしたらいいんですか?」
どれだけ考えてもわからなくて。結局、情けない声と顔で答えを求めるように土方を見あげる。
自分のしていたことのなにがいけないのだろう。
決して悪意があってやったわけじゃない。
土方はため息とも舌打ちともとれる音を洩らして、押し入れからもうひと組の布団を出した。
「昨日、壁にもたれかかって寝ていたらしいな」
「どうしてそれを……?」
「なぜ布団を使わなかった」
「……癖なんです。昔からの、習慣というか」
流は視線を敷かれた布団へと落とした。
旗本楼──流の働いていた店は、吉原でも人気店だった。
客をもてなす芸も色も一級品。提供される酒や料理もたいそう美味だった。
しかしその裏側はひどく粗悪で、殺伐としたもので。
花魁といった高級遊女には個室が与えられるが、女郎だった流を含む多くの遊女は大部屋で雑魚寝をしていた。
流はそれを喜んだ。
ひとりで寝るよりも、みんなで寝たほうがきっと安心できる。ひとつになったような気持ちになれる。
家族のように────……だけど、
流は遊女のなかでも年少で、年上の女たちにあまりいい扱いを受けてこなかった。