溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「え、じゃあ婚約者候補に会いたくないから逃げてきたわけ?」
バカラを終えて、カジノを出て違うフロアにあるバーに出向き半個室の席に案内された私たちは、二人並んで柔らかなソファに腰掛けカクテルを飲んでいた。
そこで彼と会話しているうちにポロッとパーティーに行く前に逃げてきたことを喋ってしまい、いろいろ聞かれてしまった。
私が政略結婚が嫌で逃げてきたことも、恋愛結婚に憧れていることも。
そしてその相手がいないことも。
ほろ酔いだからか、饒舌に愚痴をこぼしてしまう。
彼は相槌を打ちながらも、真剣に聞いてくれた。
話を聞くに、どうやら彼も同じパーティーに参加していたらしく私のお祖父様とは知り合いらしい。
「……だって、今時親が決めた相手と結婚だなんて……」
「まぁ加賀美だもんな?仕方ないっちゃ仕方ないだろ。それに結婚してから好きになることだってあるんじゃない?」
「そうかもしれないけど。でも、やっぱり好きな人と結婚するのが小さい頃からの夢だったから……」
呟いてグラスに入ったファジーネーブルを一口。
その甘さに少しだけ顔を綻ばせていると、彼はクツクツと笑っていた。
「……悪いですか」
二十三にもなってなに夢見てるんだって。そろそろ現実を見ろって。相手もいないくせに恋愛結婚にこだわって現実から逃げて。
馬鹿みたいって思われているだろうか。
こうやって拗ねるところも、お父様に子どもみたいだと言われてしまう所以だろう。自分でもわかっている。
いつまでも甘えている、私の悪いところだ。