溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「いや?そうやって逃げてきてくれたおかげでこうして今俺は君に会えたわけだから、俺は感謝してるよ」
顔が良いからこそ映える歯の浮くような台詞に苦笑いをこぼす。
しかし彼は私の反応に得意げに笑う。
「加賀美の令嬢がこんなにも綺麗で可愛い子だとは思ってなかったから、驚いた」
「うわぁ……そんなキザな台詞、初めて言われたかも」
「本心だよ。それにこんなのこっちにいたら挨拶代わりにいくらでも言われるだろ?」
「海外ではいつも大体両親が側にいるから」
日本では加賀美の名前が大きすぎて出会いはあっても進展しないし、海外では両親が側にいるため大して変わらない。
だからこの歳になっても相手も見つからないんだけども。
それもあって、代々政略結婚が伝統になっているのだろう。
「なるほどね。生粋のお嬢様ってわけだ」
納得したように頷いた彼は
「じゃあ、こういうのも慣れてないってこと?」
そう呟いてから徐に私の手を取り、ふわりと笑ったかと思うとそのまま手を持ち上げてキスを落とした。
「なっ……!何するんですか!?」
柔らかくて温かい感覚に、驚いて手を思い切り引く。
あまりに突然のことだったから、大きく目を見開く。速まる鼓動に深呼吸をした。
胸の前で手をギュッと握りしめている私を見て、彼の唇はゆるりと弧を描く。