溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「カジノが初めてなら知らないのも無理はない。ここはハイローラーたちのための特別なカジノ。ハイリミットルームって聞いたことない?」
初めての単語に、首を横に振る。
どうやらここは、通常のカジノでは賭けられないほどの大金を一度に賭けることができるらしい。
限られた人しか入れないというこの部屋に、何故この男は入れたのだろうか。
もしかしなくても、相当なセレブなのではないだろうか。
私、もしかしてやばい人について来てしまったのでは……!?
恐れ慄きながらも、まだ手を離してくれる様子の無い彼に連れて行かれるがままに、一つのテーブルの前に座る。
「……バカラ?」
「あぁ。これなら君もルールがわかるんだろ?見てるだけでも楽しいと思うから、好きな酒でも飲んで隣で見てて」
彼はそう言うと私のために高級な赤ワインを注文してくれ、ディーラーに話しかけてゲームを開始した。
先程私の隣で賭けていた金額の何倍もあるチップの山。
これがいくら分かなんて考えたくもない。
最初は居た堪れなくて早くここから出たいと思っていたものの、彼の言葉通りバカラは見ているだけでもとても楽しくて。次第に食い入るように見つめている私がいた。
シャンパンを飲みながら彼が勝ったり負けたりで一喜一憂している姿を見て、私もそれに同調する。
いつのまにか時間を忘れて楽しみ、気が付けばお酒を何杯も飲んだからか、そこそこ酔っ払ってしまっていた。