溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「紅葉。起きてたのか」
「……すみません、ベッドまでお借りしてしまって」
「俺が勝手に運んだんだ。気にしなくていい。それより、起きたなら声かけてくれれば良かったのに」
「いえ、お仕事の邪魔をするわけにはいきませんので」
優吾さんは私の隣に座り、ポンと頭に手を乗せる。
「ありがとう。体調は?大丈夫か?」
「はい。ぐっすり眠れて、むしろスッキリしてます」
「そうか。顔色も良くなったみたいで安心した」
ホッとしたような優吾さんは、少し寄れてしまったアイメイクを見て少し笑う。そのまま私の頰を撫でてギュッと抱きしめた。
「ゆ、優吾さん……!?」
「今度はどう?さっきのキスで、俺のこと意識してくれた?」
したり顔をしているのが見なくてもわかる。楽しそうな声色に、
「……はい。意識しました。少しだけ」
と、もう強がるのは無駄だと悟った私は悔しいけれど認めるしかない。
すると。
「……やば。不意打ちはずるすぎ」
まさか私が認めるとは思っていなかったのか、呟くと優吾さんはさらに私をキツく抱きしめる。
髪の毛の隙間からちらりと見えた耳には、シルバーのピアスが一つ。その耳は、ほんのり赤く染まっていた。