溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
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「綺麗……」
「近くで見るのもいいけど、シャンパンを飲みながらゆっくり見るのもいいだろ?」
「はい。すごい綺麗……」
すっかり日が落ちた、十九時過ぎ。
ホテル一階にある噴水の目の前のレストランで食事を楽しみ、優吾さんとお酒を飲みながらちょうど始まった噴水ショーを眺めていた。
音楽に合わせた照明がショーを盛り上げ、とても美しい情景に視線を奪われる。
実はこのショーは今までに何回か見たことがあるものの、いつも外に出て見ていたため屋内からこうやってゆっくり見るのは初めてだった。
レストランにあるスピーカーから外で実際に流れている音楽が聞こえて来て、屋内にいても臨場感あふれるショーを楽しめる。
シャンパンを飲む手も止まり、窓に向かって前のめりになってしまう。
隣から小さく笑う声が聞こえたかと思ったら、シャンパンを持つ方と逆の手が優吾さんの手で包まれた。
「優吾さん?」
「気にせず、ショーに集中して」
そんなこと言われても繋がれた手が気になってしまって、意識を持っていかれているうちに噴水ショーはあっという間に終わってしまった。
あれから、優吾さんとホテル内にある植物園に出向いたりホテル周辺を少しだけ散策したりと、デートのような一日を過ごしていた。
並んで歩きながら普段の過ごし方や仕事のことを中心に会話をしていく中で、優吾さんのことを少し知れた気がした。
優吾さんは今年三十三歳で、二つ年下の妹さんとご両親の四人家族。
妹さんはすでに結婚しており、なんと現在はヨーロッパで生活しているんだとか。