溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
ショーの余韻に浸った後、優吾さんのエスコートでレストランを出た私たちは優吾さんの部屋に戻る。
「乾杯し直そうか」
「はい」
注文してくれていたらしい白ワインの栓を抜いた優吾さんは、慣れた手つきで二つのワイングラスに注いだ。
これも私が好きだと言ったものの一つ。さりげないサプライズがくすぐったい。
ラスベガスの夜景を楽しみながら飲む美味しいワインは、とてもロマンチックで幻想的だ。
「紅葉」
「……ん?」
「今日は俺に一日をくれてありがとう」
「こちらこそ。とても素敵な一日をありがとうございました」
時刻はすでに二十時を迎えようとしていた。
グラスと、視線の向こうの窓ガラスには私たちの姿がぼんやりと映る。
その中の優吾さんは、じっと私を見つめていた。
その視線を応えるように顔を上げると、どちらからともなくゆっくりとキスを交わす。
昨日のように触れるだけではなく、かと言って午前中のように激しいものでもない。
お互いの唇を味わうように、ゆっくり、静かに舌を絡ませる。
まるで別れを惜しむかのようなとても切ないキスは、私の胸を痛いくらいに締め付けた。
「……なぁ、紅葉」
「……はい」
息が上がる私をグッと抱き寄せた優吾さんの低い声が、耳からスッと入り込んでくる。
それに返事をすると、少し身体を離して視線が絡み合った。
「もう一回、キスしたい」
「……」
「……いい?」
どこか余裕の無い顔。
初めて見るその表情。その瞳の奥には、欲望が渦巻いているように見えてゴクリと生唾を飲み込む。
私の唇に注がれる視線。