溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜



「……やっとこっち向いた」



目が合うと、優吾さんはとても優しい微笑みを浮かべていた。



「紅葉。好きだよ」



その優しい笑顔と共に初めて言われた"好き"に、何故だか鼻の奥がツンとする。



「……優吾さん」


「ん?」


「本当に私のこと、好きなんですか……?」



信じられなくて聞き返すと、



「あぁ。好きだよ」



一秒も待たずに欲しい答えが返ってくる。



「でもまだ出会って二日ですよ?」


「一目惚れって言ったら?」


「私に……!?」


「俺だって、誰彼構わず口説くわけじゃない。紅葉にはもしかしたら軽い男に映ってるかもしれないけど、そうじゃないんだ。本当に好きだから。紅葉だから口説いてるんだ」



真剣な目を見れば、それが嘘じゃないことは伝わってくる。



「本当に一目惚れなんだ。普段なら他の人のことは全然気にならないんだけどさ。カジノで紅葉が一人でいるところ見かけて、その横顔がすごく綺麗で思わず声掛けた。でも話せば話すほど、素直じゃないところとか、恥ずかしがり屋なところとか、甘え下手っぽいところとか。気強そうな顔してるのにそういうところのギャップが可愛くて堪んない。べったべたに甘やかしたくなる」



素直になれなくて強がってしまうところも、男性に免疫が無いから甘え下手なのももうバレてしまっている。



「紅葉、泣かないで」


「な、泣いてないですっ」



心のどこかで、私には恋愛結婚なんてもう無理なんじゃないかって。もう諦めた方がいいのかなって。そう思っていた自分もいた。


なのに、突然現れた優吾さんが、私のことを好きだと言う。一目惚れだと言う。


信じられる?こんなことって、本当に現実に起こるものなの?


今まで好意を寄せてもらったことはあれど、皆私が加賀美の人間だと知ると逃げていった。


"あれはなかったことにしてほしい"


そう言われたこともある。


だから、私の境遇を知った上で告白してくれたことが、嬉しくてたまらないのだ。幸せでたまらないのだ。


そう思ったら、目尻から耳に向かって涙が零れ落ちた。


泣いてないなんて嘘だ。


< 33 / 93 >

この作品をシェア

pagetop