溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「紅葉。……いい?」
私の上に馬乗りになってそう問いかけるのは、優吾さんなりの最大限の優しさだ。
今私が断れば、きっと優吾さんはこれ以上手を出さない。
けれど、頷けばもう止まってはくれないだろう。
私の頰を撫でる手が少し震えていて、優吾さんも緊張しているのがわかる。
「優吾さん……私、その、実は」
「うん?」
「は、初めてで……」
嘘をついてもどうせバレる。
正直にそう言うと、優吾さんは一瞬目を見開いて。
そして、すぐに顔を押さえて下を向いた。
「紅葉、それやばい」
「え?」
やっぱり幻滅された?
優吾さんの溜め息が聞こえて、身体が強張る。
しかし。
「……それ、男にとってはやばいくらい嬉しいって、わかって言ってる?」
暗い中でもわかる、真っ赤に染まった顔。
思い切り目尻が下がったその表情には、嬉しさが込み上げているようだった。
「え?でも、男の人ってそういうの嫌がるんじゃ……」
「惚れた子が、男慣れしてないどころか男を知らないんだろ?こんなに嬉しいことないだろ」
仰向けに寝転ぶ私を優吾さんは優しく、優しく抱きしめた。
「優しくするから」
耳元で聞こえる優吾さんの息遣いに身体が震える。
「……もしかして、耳弱い?」
「んっ……」
息がかかるようにそう問いかけられ、ぞわりとして声が漏れた。
逃げようと身を捩るものの、優吾さんはそれを許してくれない。
「紅葉。こっち向いて」
「だって……」
「ダメ。ほら、顔見せて」
真っ赤に染まっているであろう顔を正面に向けられ、恥ずかしさのあまりギュッと目を閉じる。
「紅葉。俺の方見て」
「恥ずかしいからっ、今はダメっ」
「……こんなことで恥ずかしがってたら、最後までできないよ?」
「っ……」
私が言葉を詰まらせると、面白そうにクスクス笑う。
またからかわれた!
悔しくて、勇気を振り絞って目を開ける。