溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜



「……それなら、今良い人はいるのか?」


「……いないけど」



こんなことを言っている癖に恋人もいない私は肩身が狭い。


恋愛結婚したい。けどその相手はいない。


お祖父様にも何度も言っているものの、相手がいないからか所詮口だけのわがままだと思われている。


けれど、私は本心からそう言っているのだ。


お父様の溜め息に、お母様が足を止めて私の手を取った。



「紅葉。実はね?今日のパーティーで、紹介したい人がいるの」


「……え?」


「私の昔からの知り合いのご子息でね?家柄も良くてとても誠実な人らしいの。紅葉の話をしたら是非会ってみたいって」


「……どうして、勝手にそんなこと……」


「ごめんなさいね。でも紅葉、このままっていうわけにもいかないでしょう?」


「……」



お母様が私のことを心配してくれているのはよくわかる。


今までも両親からの紹介でお見合いのような会を設けたことも数度あった。その度にそれっぽい理由をあらかじめ用意して断ってきたものの、こんな風にいきなり紹介したいと言われるのは初めてのことだった。


思わず言葉を失う私に、お父様が静かに告げる。



「紅葉。もうあと一年しかないんだ。会社のためなんだ。相手がいるならともかく、今いないのならまずは会ってみるといい。子どもみたいなことを言わずにそろそろ腹を括りなさい」



それは、私をどん底に突き落とすようなものだった。

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