溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜



次第に紅葉の行動や言動全てに完全に心を射抜かれてしまった俺は、はやる気持ちを抑えきれずに強引にアプローチを重ねてしまう。


引かれたらどうしよう。そう思いつつも、顔を真っ赤に染め上げた紅葉を見たら、もう気持ちは抑えられなかった。


翌朝紅葉を誘い一緒に過ごした一日は、クサいかもしれないが俺にとっては何者にも変え難い大切な記憶だ。


その後帰国する紅葉と別れラスベガスに残った俺は、狂ったように仕事に邁進した。


早くこの事業を終わらせて紅葉に会いたい。


幸いにも次は日本に帰国予定。そしてしばらくは海外に赴く予定も無かったため、必死だった。


休み無く働く毎日だったものの、紅葉との甘い時間を思い出せばいくらでも頑張れたし、たまにやりとりするメッセージに癒されて次の日からも仕事が捗った。


そうして予定よりも半月ほど早く仕事を終わらせた俺は、日本に帰国して今に至る。


帰国してからというもの、忙しいことには変わりないが紅葉と同じ日本にいることが嬉しくて、疲れなどあっという間にどこかに飛んでいく。


今まで会いたくても会えなかった。それが、今では少しでも時間があれば会える距離にいるのだ。


当たり前のことだが、俺にとっては飛び上がるほどの嬉しい出来事だった。





……と、ここ一ヶ月のことを思い返しているうちにひとまず調整を終えて会社を出た。


時刻はすでに午前一時過ぎ。おそらく紅葉はもう寝ているだろう。


せっかくの貴重な時間が仕事に溶けてしまった。こればかりは自分の肩書き上致し方ない。


無理矢理そう自分を納得させてホテルに帰った俺は、紅葉に"今日はごめん。また近いうちに必ず埋め合わせする"と送ってそのまま倒れるように眠るのだった。


< 57 / 93 >

この作品をシェア

pagetop