夜が明けぬなら、いっそ。
変化の四




「見てくれ小雪!これがアユ、こっちがイワナ、それからニジマス!」


「…本当に全部1人で捕ったのか」


「……まぁ、近所の女達に少しばかり譲ってもらった」



そんな正直な回答に、休めていた身体を起こしてまでも鼻で笑ってしまった。


こいつは見れない顔立ちではないから、笑顔の1つでも振り撒けば町の女など簡単に釣れてしまうのだろう。

釣って欲しいのはどちらかと言えば魚だというのに、まぁいいかと、ここは飲むことにした。



「そろそろ私も町へ下ろうと思う」


「…もう少しゆっくりしても、」


「問題ない。日中はだいぶ暖かくなって咳も落ち着いている」



常陸国を目指して来たはいいものの、間を跨ぐ地でこんなにゆっくりしている暇は正直ない。

到着したらしたで伊佐という男の居場所すら分からない中での捜索となるのだから。


あれから景秀も私を心配しているようだったが、そこまで言葉にはしなかった。

そんな気遣いが逆に今は助かる。



「小雪、その先は少し斜面になってるから」


「……これはなんの手だ。握手か?」


「……」



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