オトメは温和に愛されたい
 別に今更温和(はるまさ)と二人きりになったからって緊張はしな……しな……しない、けどっ。
 実家の彼の部屋にお邪魔していた時とは、やっぱりほら、その……ふっ、雰囲気が違うからっ。

(お、おかしいなっ。カナ(にい)の部屋に行っても全然なんともないのに……)

 どちらも兄だと思えば似たようなもの……だと思いたい……のに……血の繋がりがないというのはこんなにも落ち着かないものなのかしら。

 リビングのソファーに座らされて、救急箱を手に戻ってくる温和(はるまさ)を目で追いながら……心臓がうるさく鳴るのをどうしても意識してしまう。

 カナ(にい)だってそんな不細工ではないし、キリッとした男らしいハンサムだと思うけど……でもやっぱり温和(はるまさ)のかっこよさと比べちゃうと足元にも及ばないから。だからこんな、ドキドキしてしまうんだ、うんっ。

「砂、すげぇ入り込んでるな」
 私の足をギュッと掴んで傷口に顔を寄せると、温和(はるまさ)がそんなことをつぶやく。
 (うつむ)き加減の目元に、まつ毛が影を落としているのが見えた。

 それに……。

 顔を膝に近付けられたとき、温和(はるまさ)の柔らかい前髪が足をさわさわとくすぐって、私は心臓が口から飛び出してしまうんじゃないかと思うぐらい苦しくなった。

 グッと唇を噛んでいないと、変な声が出てしまいそうでっ。
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