オトメは温和に愛されたい
「あ、あっ、あのっ、温和(はるまさ)っ。わたっ、私っ、自分で洗って……くる、からっ」
 その感触から逃れるようにそう言ったら、
「だから……お前は自分で洗わせたら、絶対痛くて手加減するから却下だってさっきから言ってんだろ」
 昔からそうじゃねぇか、とぶつくさ言う姿は、幼い頃のハル(にい)を何となく彷彿とさせて。
「心配……して、くれてる、の?」
 恐る恐るそう聞いたら、
「バカか。俺の目の前で転ばれて、手当てが微妙でそれが悪化したとか言われたら寝覚め(わり)ぃだけだ」
 不機嫌そうにそう言われて、そうですよね、と妙に納得してしまう。

 温和(はるまさ)が私を心配してくれていたのは遠い遠い昔の話。
 今はたぶん、大きな事故に遭ったって、自分に関係ないところで、だったらお見舞いにも来てくれないんだ。
 私以外の人になら昔と変わらず優しくするくせにさ……。
 ハル兄の接近禁止令を守らない私が悪いんだけど……やっぱり何か悲しい。

 そんなことを思って、一人しゅんとしていたら、私の思いなんて知らぬげに、いきなり腕を引っ張り上げられた。
「えっ、えっ?」
 無理矢理立たされてびっくりしていたら、「掴まれ」って言われて、温和(はるまさ)の逞しい腕を半ば強引に握らされる。
「風呂場行くぞ」

 お、お、お風呂っておっしゃい、ましたっ!?
 こ、これでドキドキするなって方が……無理、です、よ、ね? 
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