オトメは温和に愛されたい
 私の言葉に、温和(はるまさ)が息をのむ気配がした。
 ややしてそっと両腕を開放してくれた温和(はるまさ)だったんだけど……。

「あ、あの……温和《はるまさ》さん? 目……」

 視界は未だに彼の手に覆われたままで、私は依然まぶたに載せられたままの温和(はるまさ)の手に、戸惑いながらもそっと触れた。

 なのに全然動いてくれる気配がない温和(はるまさ)に、私はもう一度声をかける。
温和(はるまさ)?」
 うーん。何か、このままでは(らち)があかない気がする。

 と、不意に外から聞こえてくる雨の音が強くなって、私はそれに励まされるように手に力を込めた。
 ギュッと温和(はるまさ)の手首を掴むと、少し強引に彼の手から視界を逃す。
 そうして温和(はるまさ)を見上げたら……。

「なっ……」

 こっちが照れてしまいそうになるぐらい、温和(はるまさ)が目端を赤く染めていて。
 え? 温和(はるまさ)って……こんなに照れ屋さんだったの?
 私、知らなかった!

「あんまジロジロ見んな」

 男の沽券(こけん)に関わる、とか眉間にしわを寄せてもっともらしいことを言って私を見ようとしないの、本当可愛い。

「ね、温和(はるまさ)、お願い。こっち、見て?」

 言ったら、逆にふいっと視線を外されて「黙れ、バカ音芽(おとめ)」って言われた。
< 135 / 433 >

この作品をシェア

pagetop