オトメは温和に愛されたい
***

 11時過ぎに温和(はるまさ)が家のチャイムを鳴らして、私は急かされるようにいそいそと玄関扉を開けた。

「――可愛いな」
 温和(はるまさ)は私を見るなり開口一番そう言って目を細めた。

 うちの両親はもちろんとして、温和(はるまさ)のご両親も小さい頃からよく見知っている。
 だからといって……きっと今日は結婚の挨拶に行くんだし、と思ったら余りカジュアルになり過ぎるのもなって思って、それなりに気をつけたつもり。

 朝から鏡の前であれこれファッションショーをして、結局選んだのはライトブルーの、5分袖の膝下丈ワンピース。デコルテと袖口に目立たない程度にレースがあしらわれていて、結構清楚な印象になっている……はず。
 首元にはホワイトゴールドの華奢なネックレスをつけてみた。耳は髪の毛で隠れるので何もつけていない。
 もちろんストッキングも履いて、素足ではない。
 これにオフホワイトのパンプスを合わせたらまぁまぁかな?
 ハンドバックも靴に合わせたオフホワイトのハンドル付きの小さめのものを用意してある。

 温和(はるまさ)はグレーのスーツに淡いブルーのワイシャツを合わせていて、ネクタイは濃紺のシンプルなものをしていた。
 期せずして私のワンピースと温和(はるまさ)のワイシャツの色彩系統が近くて嬉しくなる。

温和(はるまさ)も……すごくかっこいい……です」
 温和(はるまさ)のスーツ姿なんて仕事の時に見慣れているはずなのに、今日は何故か照れ臭くて頬が熱くなってしまう。

 ああ、私、これから彼と実家に結婚のご挨拶に行くんだなって思ったから、かな。

 温和(はるまさ)が私の手を取って、左手の薬指に指輪がはまっていることを確認する。
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