逆プロポーズした恋の顛末
思わず、幸生とハモってしまった。
「尽が、園芸に興味があるなんて、知らなかったわ」
「興味があるわけじゃない。前の部屋の持ち主が栽培していたのをそのまま引き継いだだけだ」
「でも、お世話しているんでしょう?」
「水やりくらいだ。あとはプロに任せている」
「そのうち、所長みたいになるんじゃない?」
からかい半分に言うと、尽は肩を竦める。
「かもな」
「お昼、何か作ろうか? 食材があれば、だけど……」
「冷蔵庫に入ってる」
あまり期待せずに覗いた冷蔵庫の中には、意外なほど食材がぎっしり詰まっていた。
「これ……」
「律たちが来るから、買い込んでおいた。幸生を連れて外食するのも、買い物に行くのも、大変だろ」
「ありがとう」
「足りないものがあれば言ってくれ。近くに、コンビニとパン屋もあるし、歩いて行ける距離にスーパーもある。重いものは配達もしてくれる」
「これだけあれば、しばらくは大丈夫でしょ。尽は、何が食べたい? 一番早くできるのは、パスタだけど」
「俺は何でもかまわない。幸生、パスタ食べるか?」
「うん! ケチャップ味のがいい!」
「ナポリタンね。尽も、それでいい?」
「ああ。皿や鍋は適当にその辺にあるのを使ってくれ」
「わかった」
たまに自炊しているというだけあって、キッチンにはひと通りの道具と調味料が揃っていた。
幸生のおしゃべりに付き合い、相槌を打ち、時々質問をしている尽の様子を背中で聞きながら、野菜を切り、パスタを茹でる。
病院では、スタッフが交代でなるべく連休を取れるように調整しているらしく、尽は明日と明後日が丸々オフ。明日は水族館、明後日は遊園地に行こうと言う尽に、幸生はいまから大はしゃぎだ。
できあがったナポリタンとオニオンスープ、ブロッコリーとトマトのサラダを食べた尽は、シャワーを浴びて、仮眠を取るため寝室へ。
幸生も、「パパにあおむしの絵本を読んであげる!」と言って、一緒に付いて行った。