逆プロポーズした恋の顛末
道中、午来弁護士は幸生の質問攻めに答えつつ、自分にも二歳の男の子がいること、幸生と同じく絵本がとても好きなことなどを話してくれた。
そのため、尽の祖母について容姿や年齢などの必要最低限の情報すら得られないまま、目的地に到着してしまった。
「こちらの別邸には、もともと尽の両親が住んでいたんですが、夕雨子さんの離婚後、彼らが本邸へ、彼女がこちらへ移ったんですよ」
インターフォンで到着を知らせると、鉄柵の門扉が開く。
美しい薔薇が咲き乱れる庭の向こうに見える洋館は、二階建て。庶民からすれば十分豪邸だったけれど、高級住宅街の中にあっては、やや小ぢんまりした造りだ。
「ママ! きれーなお花がいっぱい咲いてるね!」
「本当ね。見事な薔薇ですね?」
「夕雨子さんの趣味です。ここ数年は、ご自分で世話ができなくて、専門家に任せていたようですが」
庭に咲いている薔薇は、赤、ピンク、白、黄色と実にカラフルで、花弁の形、花冠の大きさなどもさまざま。開放したら、見物客が押しかけそうだ。
玄関先で車を止めた午来弁護士は、幸生をチャイルドシートから降ろし、荷物まで持ってくれた。
すでに玄関ドアは開け放たれていて、ちょっとふっくらした初老の女性が笑顔でわたしたちを待っている。
「現在、夕雨子さんはおひとりでは日常生活を送るのが困難なため、看護師の吉川さんが、家政婦役を兼ねて住み込みでお世話をしています」