逆プロポーズした恋の顛末
エレベーターを降りると、エントランスにはスーツ姿の男性がひとり。
「すみません、お待たせしてしまって……」
「早いですね。十分経ってませんよ?」
「でも、遅刻です」
「誤差の範囲内ですよ」
爽やかな笑みと共にそう言う彼は、四年前と変わらず、誠実そうな人柄が滲みでている。
「こんにちは、幸生くん。はじめまして、だね? 僕は、パパのお友だちで、午来 誠。弁護士のお仕事をしてるんだ」
「こんにちは! べんごしさんって、何をするひと?」
さっそく質問をぶつける幸生に、彼は「そうだなぁ」と首を捻る。
「簡単に言うと、困っているひとを助けるお仕事、かな」
「XC戦隊のヒーローみたいに? 昨日、遊園地で悪者をいっぱいやっつけてたよ!」
昨日遊園地で見たショーを例に出す幸生に、午来弁護士はくすりと笑って首を振った。
「やっつけるためとは限らないけれど、ヒーローみたいにカッコイイ技とか武器を使わず、言葉で、お話することで、戦うお仕事なんだ」
「ふうん……? むずかしいお仕事なんだね?」
「そうだね」
よくわからないという顔をする幸生に、午来弁護士は「納得させられないなんて、弁護士失格かも」と苦笑いだ。
「次に会う時まで、幸生くんにわかりやすい説明を考えておくよ。じゃあ、行きましょうか」
「はい」
促されてエントランスを出ると、そこにはシルバーのワンボックスカーが停まっていた。
ビシッとスーツを着た弁護士には……あまり似合わない車種だ。
「事務所の車にはチャイルドシートが付いていないので、自分の車なんです」
言い訳するように説明した彼の指には、プラチナのリングが光っていた。
四年前には、なかったものだ。
「ご結婚されたんですね?」
「はい、三年前に。息子が一人います。もっとも、うちの息子は幸生くんとちがって、現在イヤイヤ期真っ只中。夫婦で手を焼いてますが……。依頼人――夕雨子さんが、再びわたしを指名されたのは、子どもの扱いに慣れているからでもあるんでしょう」
幸生を後部座席のチャイルドシートに座らせる午来弁護士は、確かにパパらしく手際がよい。
「依頼人のご自宅までは、ここから十五分程度です。ケーキやお菓子を用意したそうなんですが、お二人のアレルギーを心配していました。何か、食べられないものはありますか?」
「いいえ、わたしも幸生もいまのところ、食物アレルギーはないです」
「じゃあ、安心ですね」