逆プロポーズした恋の顛末


幸生が描いた魚の絵に、各々名前を書いてやりながら、そんなことを考えていたら、鋭い指摘が入った。


「ママ、そっちはネオンテトラじゃなくて、カージナルテトラだよ!」

「え? そうなの? でも……」


何がちがうのかわからず戸惑っていると、幸生はどうしてわからないのだと言いたげに、主張する。


「ぜんぜん、ちがうよっ!」

(いや、どう見ても同じだけどね?)

「そうなんだ。ごめんね? 書き直すわ」


ちがう種類だと主張する幸生に従い、名前を書き直す。

よく言えば意志が強い、悪く言えば頑固。
親子は、顔立ちだけでなく、中身も似るものだと血の繋がりの不思議を思う。
尽から見れば、わたしに似ている部分もあるのだろう。

無意識にじっと見つめてしまっていたらしい。
どこで覚えて来たのか、幸生がまるで尽のようなことを言い出した。


「なんでそんなにぼくのこと見てるの? ママは、ぼくのこと好きなの?」


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