逆プロポーズした恋の顛末


(口調まで、尽そっくりなんだけど。この調子で、十年後、二十年後、どんどん尽に似てくるとなると……子離れできる自信ないわ)


出会った当時だけでなく、いまもなお、尽はわたし好みの男だ。
彼そっくりに育つであろう幸生は、わたしが見られなかった尽の姿をこれから見せてくれるわけで……。


(うーん、『息子が恋人』状態になりそう)


「そうよ。ママは、幸生のことがとーっても好きなの」


やわらかな頬にチュウをお見舞いしてやると、幸生はくすぐったそうに笑って、わたしにぎゅっと抱き着いてくる。


「ぼくもママのこと、とっても好き!」 


(ああ、どうしよう。嫁いびりするような姑にはなりたくない。でも、いつまでもママが一番と言ってほしい……)


そんな気の早い心配をしていたら、テーブルの上に置いてあったスマホが『ゴゴゴゴ』と不穏な音を立てて震えた。


「パパからっ!?」


期待のまなざしを寄越す幸生に、「どうかな?」と言いながらスマホを取り上げれば、尽からのメッセージが届いていた。


『立て込んでいて、帰りは遅くなるかもしれない。晩メシも待たなくていい。幸生に謝っておいてくれ』


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