逆プロポーズした恋の顛末
結婚式の写真はあくまで口実だったので、あとでスタッフから渡してもらおうと思っていたのだけれど、所長のこの様子では会話の糸口が必要になりそうだ。
尽と目が合うと、彼も同じことを考えたらしい。
何がなにやらわけがわからない、とわたしたちの顔を見まわす幸生の横にしゃがみこみ、耳元で囁いた。
「幸生。おじいちゃん先生に、コレを持って行ってくれるか?」
偲月さんから貰った、「撮りたて」の写真データが入ったデジタルフォトフレームを幸生に手渡す。
「いいよ!」
大事な任務を請け負った幸生は、張り切って所長のもとへ駆け寄り、手にしたフレームを差し出した。
「ハイ、おじいちゃん先生!」
「あ、ああ……」
ぎこちない動作で所長が受け取り、無事役目を果たした幸生はわたしたちの方へ戻りかけたが、何を思ったのか。突然くるりと向きを変えると、夕雨子さんの部屋のドアに手をかけた。
「え」
「こう、っ」
わたしたちが止める間もなく、ドアをスライドさせ、中へむかって元気よく呼びかける。
「ゆーこちゃん! おじいちゃん先生が来たよっ! ごめんなさいできるよ!」