逆プロポーズした恋の顛末
幼馴染として長い付き合いの幸生と千陽ちゃんだが、その関係は曖昧で、掴みどころがない。
お互いの家を行き来するだけでなく、休日に二人きりで出かけたり、時々旅行もしたりしていると思われる。
それなのに、「恋人同士」ではないらしい。
一度、尽が「夕城夫妻にちゃんと挨拶してるのか?」と幸生に訊いたところ、「何の挨拶?」ときょとんとした顔で問い返された。呆れた尽が「結婚の挨拶に決まってるだろ!」と言うと、今度は「結婚? 誰と誰が?」と真顔で訊き返された。
わたしの目から見ても、千陽ちゃんが幸生に恋愛感情を抱いていることは明白で、幸生も彼女のことを特別扱いしていることはまちがいないのだが、本人にはその自覚がまったくないらしい。
魚の求愛行動には詳しくても、人間のソレには疎いようだ。
「あの、律ママ……ちょっとおかしなこと訊いてもいいですか?」
「なぁに?」
「尽パパには、どんなプロポーズされたんですか? どうしてOKしようと思ったんですか?」
「え?」
千陽ちゃんは、ママに相談して、うっかりパパの耳に入ろうものなら大事になるので、わたしに訊きたいのだと声を潜めた。
「その……あるひとから、プロポーズ……みたいなことを言われたんですけれど、プロポーズだと思っていいものかどうか、わからなくて。その、ちゃんとお断りすべきなのか、聞き流した方がいいのかもイマイチわからなくて。うちのパパの場合、あまり参考にならないですし、きっと大騒ぎするから……」
「そうね。朔哉さんなら、たとえプロポーズじゃなかったとしても、相手の男性を連れて来いとか言うでしょうね」
「はい」
「で、何て言われたの?」
「そのう……」
千陽ちゃんは、白い頬をピンク色に染めながら、衝撃的な言葉を口にした。
「昼も夜も、三百六十五日、君とシーツの上で愛し合いたい?」