逆プロポーズした恋の顛末
とりあえず、落ち着くべきところに落ち着いたことを確認し、そっとドアを閉める。
リビングへ戻り、やっぱりここは二人きりにさせてあげるべきだろうと、お財布とスマホだけ持って家を出ようとしたところに、尽から電話が架かってきた。
真っ昼間、仕事の最中だろうに、珍しい。
「どうしたの? 尽」
『幸生が帰って来たことだし、今夜久しぶりに家族で食事に行かないか?』
「あー、ええと……それ、今日じゃない方がいいと思うわ」
『何でだ?』
「話せば長くなる。ね、その代わり、二人でデートしない?」
『律と?』
「何よ。イヤなの?」
『イヤなわけないだろ。どこに泊まりたい?』
「え? 泊まる? 何で?」
『二人きりになりたいからだよ』
「…………」
『自分で訊いておいて、照れるなよ』
「照れてないわよ!」
『……ん、よし、「ザ・クラシック」で取れた。アーリーチェックインもできるから、先に行って寛いでいればいい。俺も、早めに切り上げる』
「ありがとう、尽」
『どういたしまして。じゃあ、あとで』
電話を終え、ふと思いついて、今朝水揚げをして玄関に飾った深紅の薔薇を三本手に取った。
リボン代わりに、首に巻いていたスカーフを結び、時が過ぎるのは早いものだとしみじみ思う。