俺の好きにさせてください、お嬢様。
それで───…私が高校を卒業したら一緒にイタリアに行かないかと誘われていた。
「でもアリサもたぶんあんな感じになるんだろうなぁ」
「え…?」
「イタリア行くまで待たなくていい?なんだったら今でもいいよ俺は」
「なっ、なに言ってるのよ…!!」
バッと上げてしまった手を簡単に捕まえてしまうのは、この男だけ。
そのまま余裕そうに引っ張ってしまうのも、それが許されるのも、この生意気な男だけ。
「んっ…!バカ…っ、まだお付き合いすらしてないじゃない…!」
「え?してるつもりだったんだけど」
「し、してないわ…!だって……なにも言われてないもの…、」
思わず泣きそうになってしまった私に、触れるだけのキスがひとつ落とされた。
今までは強引で深いものばかりだったけど、今は触れているだけのはずなのに一番に甘いキスで。
「んっ…、ん、……りん、」
「アリサ、お前が好きだ。───…付き合ってくれる?俺と」
それは今までとは比べ物にならないくらい、甘くて優しい早乙女 燐の顔と声。
付き合う…なんて。
婚約者だったときの私たちには考えもしない言葉だった。
とびきりの四つ葉のクローバーは、こんなにも近くにあったらしい。
コクンっとうなずいて、顔を真っ赤にさせる目の前の御曹司に抱きついた冬の日───。
番外編① fin.