僕は、空の上から君を見守る
街に向かう道中。
「それでよ!俺は言ってやったんだ!」
ビスルの冒険譚がひたすら続く中、
ルーホーはブルーの横を並んで歩いていた。
いざ目の前にすると会話が詰まる。
話したい事はいっぱいあったはずなのに。
本人の前だと頭が真っ白になって何も浮かんで
こない。
そんな気まずい雰囲気を盛り上げる為か
ビスルがずっと一人舞台で
語り続けていた。

そんなルーホーの目の前にある光景が映る。
「あれ?ここって!?」
そこに広がるのは緑の葉や
赤やオレンジ、ピンク、黄色の色とりどりの
花びらが散る無惨な光景。
ルーホーはその花びらを1枚拾う。
「、、、ここって、、、チューリップ畑、、、」
一輪すらも咲いていない根こそぎ川に持っていかれてしまったチューリップ畑。
散ってる花びらや葉の数の数十倍もの
チューリップがかつてはこのに咲き誇っていたのだろう。

「そう、、、ここには一面にチューリップが咲いていたの。でも、、、私が駆けつけた時には、、、
もう、、、」
花をこよなく愛するブルー。
氾濫した川の水が街に押し寄せた時も
第一に心配したのはチューリップの事だった。
丹精込めて育てたチューリップ。
ここの畑が一面に咲き誇るまで
どれだけの手をかけて
どれだけの愛を注いで来たのだろう。
ブルーの頬を涙が伝う。

ブルーをずっと眺めていたルーホー。
それを知っているだけに
いたたまれない。
『僕が川を氾濫させたせいだ。』
罪の十字架が重くのしかかる。
でも、目の前のブルーの涙が
今は自分が病んでいる場合ではない!
この子を笑顔にする為に来たのだから!
ルーホーの背中を押した。

「ふぅ〜〜っ」
ルーホーが大きく深呼吸をする。
すると
周りの花びらや葉が
フワッと浮かび上がる。
「!?、、えっ、、!?」
そのひらひらと舞う色とりどりの花びら達が
ルーホー達の周りをくるくる回ると

それはルーホーの掌の上に集まっていき
一つのちいさな竜巻。
つむじ風が出来る。

「うわ〜。綺麗〜。」
それはまるで
色とりどりの花が摘まれた
"風の花束"。

それを手に
まるでプロポーズでもするかのように
ルーホーはブルーに告げた。
「僕が!沢山の花を本当に摘めるように!」
「街も花畑も必ず元に戻すから!!」

その言葉が、
この風で作ってくれた花束が
その想いが
周りを流れる風が
ブルーの悲しみの心を暖かく包む。
「ありがとう。」
ブルーの両目からは大粒の涙が溢れた。

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