そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
***

「さて花々里(かがり)久遠(くおん)さんの話ではね、キミが飲んだ百花蜜(ひゃっかみつ)の発酵飲料の残り全量をキミに注ぎかけてから、その小瓶の縁ギリギリいっぱいまで40度ぐらいのお湯を入れれば……キミは晴れて元の大きさに戻れるんだそうだ」

 言って、頼綱(よりつな)が過日あのお店で見かけたアンティーク風の牛乳瓶くらいの小瓶を見せてくれて。瓶の中で半量程度の液体が揺れていた。

 40度というとお風呂のお湯ぐらいかな。
 あ、でも小瓶の中身を先に掛けるって言ってたから……もしかしたら冷たいかも。

 でも〝危険〟と言うほどのことではないよね?


 ソワソワと色々考えて、はたと気がつく。

 あのトロリとしたのを頭から注ぎかけられるってことは…服も身体もきっとドロドロになっちゃう。

 だから頼綱、途中で着替え、用意してくれたんだ。

 年上だからかな。
 本当に思慮深いところがあって感心しちゃう。


「先に風呂に湯を張ってくるから待っておいで」


 40度のお湯も、ホテルの給湯温度をそう設定してお風呂に湯はりすれば解決するよね。

 頭いいなぁ。

 それに――。
 多分処置後の私には入浴が必要だろうし、一石二鳥だ。


 テーブルの上、瓶が転がって落っこちないよう、頼綱のスーツの上着に包まれて置かれた私は、花畑の中に座り込んであれこれ想いを巡らせる。

 と、浴室から戻ってきた頼綱が、私を真剣な眼差しでじっと見つめてきて言うの。
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