政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
机と椅子、ベッドがあるけど娘の部屋というよりは住み込みの使用人のための部屋のようだった。
町子さんの哀れむような目を見て、自分の感想が間違ってないことを知った。

「明日からよろしくお願いします」

「そ、そうだね。夕飯は台所でとるように言われているけど、今日は部屋に持って行くように言ってあるから」

「はい」

私がなんの不満も言わずに返事をしたのを見て、町子さんはホッとしていた。
部屋のドアがしまり、一人になると雪の音しか聞こえないくらい静かになった。
それくらい広いお屋敷だった。
部屋の窓を開けると、すでに外は薄暗い。
雪の白さだけが明るく見えて、私は空を仰いだ。
一人になっても泣かずに済んだのはお祖父さんの存在だった。
私の唯一の血縁だと思えた人。

「ここにいても大丈夫」

そう呟いた声は誰にも聞こえることはなく、ただ冷たい空気の中に溶けていった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


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