政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
井垣の家に来て初めて迎えた朝。
朝五時になると起きて身支度を済ませた。
通っている公立高校の制服の上にエプロンをつけ、部屋を出る。
住み込みのお手伝いさんの町子さんがすでに台所に立ち、朝食の準備をしていた。

「早いね。六時でいいんだよ」

「感心だねぇ」

年配の人ばかりで慣れた手付きから、長年この家で働いてきたのだとわかった。

「私はなにをすればいいですか?」

「そうだね。大旦那様に新聞を渡して朝食を運んでくれるだけで十分だよ」

「え?それだけですか?」

「いいの、いいの。実際のところ、手は足りてるんだから……」

私にそう答えた人は町子さんに肘でドンッと突かれていた。
手は足りているけど、使用人扱い―――つまり、芙由江(ふゆえ)さんが私を井垣(いがき)の娘として認めたくなかったということだろう。
気まずい空気が流れて、私は苦笑した。

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