政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
何度か、唇をあわせて、お互いの体を抱き締めた。
もう離れられない。
いつか、また悲しい思いをするのだろう。
それでも一緒にいたいと思えるのは私にはあなたが必要だから。
この先、生きていくために。
こぼれた涙を壱都さんは舐めとり、私を強く抱きしめ、逃さなかった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


紗耶香さんを送り、帰って来た樫村さんを夕食に招待した。
寒い日には鍋。
私はそう思っていた。
それが―――

「鍋?」

「冬と言えば、お鍋ですよ」

「知識としては知っているよ」

壱都さんから返って来たのはそんな言葉だった。
知識としてって……
私は白菜を手にしたまま、苦笑するしかなかった。
どうして外に出ていたのか、と聞かれたから、今日の夕食はお鍋だったので材料を買いに行っていたんですと答えると、あまり食べたことがないと言われた。
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