政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「じゃあ、どうして」

「わかれよ」

壱都さんは呆れたように言った。

「俺が好きでもない人間を部屋に入れるような人間か?キスするか?」

「いえ……」

人の良さそうな仮面をかぶり忘れていますよ―――王子というより、暴君もいいところで、これが素なら、いつもの猫かぶりは猫何匹分になるんだろうと思った。

「朱加里のどこが好きかあえていうなら、嘘をつけないところだな。全部、顔に書いてある」

何度も好きだと言ってくれたせいか、なんだか恥ずかしかった。
壱都さんをまったく信じてなかった自分自身のことも。

「少しは納得してくれた?」

「はい」

繰り返し言われる言葉は疑心暗鬼だった私の心の中を埋め、壱都さんが与えてくれる好意に甘えても許されるような気がした。

「それなら、よかった」

そう言って顎をつかむと、壱都さんは再びキスをした。
次は甘く優しいキスだった。
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