政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
樫村の采配なのか、顔を合わすことはなかったから、今頃、悔しがっているに違いない。
朱加里は疲れたのか、ただ静かに座っていた。
「待たせたかな」
「いいえ」
「母さんのお茶はお茶席だったけれど、平気だった?」
「大丈夫です。お祖父さんの知り合いだというお茶の先生のところへおつかいに通っていましたから。その時、お茶の先生からお茶とお茶菓子をよくご馳走になっていたので作法は少しだけわかるんです」
「ご馳走に?」
「親切な方で行くと必ず、お茶席を設けてくれるんです」
「へえ。他にはどんな知り合いがいたのかな」
「お花の先生や作法の先生とか。日舞と琴と……どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
さすが井垣会長。
朱加里が恥をかかずにすむよう必要なものを自然に身につけさせていたというわけか。
まったく――――会長には敵わないな。