政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
「そうだけどねぇ……。こう言っちゃなんだけど、奥様もお嬢様も親切とは縁遠い方だよ。大旦那様が病気になる前はおべっかばかり使っていたのに今じゃ部屋にも寄り付かないし」

「そうなんですか。お祖父さんは寂しいでしょうね」

話を合わせるのにそう答えた。
町子さんはしゃべりすぎたと思ったのか、それ以上なにも言わなかった。
どこまで続いてるのか、長い廊下を歩いていた。
旅館みたいに広い家はどこもかしこもピカピカでホコリ一つない。
窓の外には本格的な日本庭園があり、池には高そうな鯉が泳いでいた。

「大旦那様。朱加里さんをお連れしました」

高級そうな(ふすま)の前で立ち止まった。
襖には竹林と梅の木が描かれ、小鳥が梅の花をついばんでいる。
金や銀の細工も見事だった。
この襖一枚で母が稼いでいた月給と同じかもしれない。

「入れ」

襖の向こうから、乾いた咳としゃがれた声がした。

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