ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました
 


 翌日、早めに朝食を食べて、二人は砂漠のリゾートホテルを後にし、空港に来ていた。

 桔平は真珠には、まだゆっくりしていていいと言ってくれたのだが、真珠もついて来ていた。

 桔平の後輩は、到着時も利用できる有料ラウンジで寝ていると言っていたらしい。
 
 ホテルを出て車で走っていたとき、霧に包まれたドバイの街が砂漠の向こうに見えてきた。

 またあの夢の世界に戻るのかと思ったものだ。

 いや、何処までもここは夢の世界のような感じなのだが……。

 そんなことを考えながら、二十四時間人でごった返している空港の中を歩いていると、桔平がふと気づいたように言ってきた。

「うちの後輩もお前も、パスポート持ってたから、ひょっとドバイまで来れたが。
 持ってない可能性もあったよな」

「そうですよ。
 パスポート切れてるなんてことよくありますよ」

「ああ、お前はモルディブに行ったんだったか」

「……パスポート、切れないよう気をつけてたんです」

 ちょっと前にモルディブに行っていたから、運良く持っていたというわけではない、と暗に告げる。

 式が終わったあと、桔平が言ってきた。

 妻が必要になるときまで自由にしていていいと。
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