天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
白蘭の渾身の術も無駄だった。
玲心は苦しみに顔を歪めたまま息を引き取る。
「玲心っ…」
魔界でかつて一番美しいと言われ、炎狐族の長、そして皇太子の正室。なのに今の玲心は顔が腫れ美しさは失い、こんな戦場で一人原因もわからず息を引き取ったのだ。
悲惨な死にざまだ。
キラキラと消えるのを見守り白蘭は自身の涙を拭いた。
「父上!」
紅蓮の大きな声に何事かと顔を向けると、月影の氷の剣が魔帝の喉に刺さっているのが見えた。
…月影。任せろってこういうことだったの…
「父上!!」
即死だったのだろう。紅蓮が名を呼ぶも魔帝は返事をせずすぐに光と共に消えた。
月影が魔帝を殺してしまったのだ。