天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
自分で何とかしないと、天女の力で蘇生術を施し続けるしかない。
「白蘭。魔帝は?」
「…」
聞かれた白蘭は何も言えなかった。
殺せなかった。どうしても殺せなかった。
母上を魔帝は間違いなく愛していたのだ。やり方は違えど愛していた。
愛ゆえに鬼神を八咫烏一族を殺したのだ。
私も魔帝を殺せば、あの男と同じになってしまう。
そして何より紅蓮の前では手を振り下ろすことはできなかった。
首を振る白蘭に月影は言った。
「私にすべて任せるといい」
「え?月影なにを…」
そう言い残す月影を追いかけようと思ったが玲心を置いていくことはできなかった。
玲心は私と一緒にいてくれた魔界での友だもの。
見捨てることなどできない。
「玲心…私がついているわ」
もう話すこともできず顔はひどく腫れヒューヒューとかすかに息をしているだけだ。
直感で助からないのは分かったが蘇生術をやめなかった。