天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
「白蘭…」
彼女はどこにいるのだろうか。
私の事をまた忘れてはいないだろうか。
今日でちょうど千年目だ。
もうこの世界は白蘭が望む争いのない平和な世界へとなったぞ。
「いつまで待たせる気だ」
まあ、魔帝であるこの私を千年待たせるのも白蘭らしい。
きっと白蘭のことだ。どこかで道に迷い、迷子にでもなっているんだろう。
その様子を想像し、ふっと笑う。
「紅蓮様ー」
朱雀が虹彩樹の庭の外から呼ぶ声が聞こえる。
きっと凛の居場所でも聞きにきたのだろう。
「朱雀。今、そちらに行く」
出口に向かおうとした、その時、空一面に光がさした。
「っ」
あまりの明るさに目をつぶるとコツンと頭に何かが落ちてきて、床に落ちる前に手で受け止めた。
慣れてきた目で見ると、それは透明な石だった。
「天空石…」
まさか…。その姿を求め庭を探す。
すると求めていた人物は初めて出会った時、同様に虹彩樹の花を愛でている。
「白蘭!」
名前を呼ぶと振り返り美しく笑った。
「紅蓮。いま戻ったわ」
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天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~ 【END】