天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
対して月影は反撃の形ではなく、防御を取った。
「なぜ反撃しようとしない!」
「…お前こそ親の仇だろう。ためらわず殺せ」
紅蓮業火を放てばいくら強い天帝の月影でも、あの防御では死を免れない。
そうだ。母上の仇だ。天帝の月影を殺すには絶好の機会…殺すのが普通だ。
だが、どうしてもこの場では月影との思い出が邪魔をする。
「くそっ!!!」
結局、心優しい鳳凰はかつての友を殺せずその感情を思い出の庭にぶつけた。
庭は瞬く間に鳳凰の炎に包まれ灰と化す。
「この場をもって私たちの旧友の縁は切れた…。今後、お前と私は敵同士。次に会った時には魔界の戦神としての務めを果たす」
「…」
怒れる鳳凰に月影は何も言わずに天界へと去っていった。
…母上、申し訳ございません。
思い出の庭も酒神の酒も旧友も全て消え、残ったのは一人心痛する魔界の皇太子だけだった。
新月が終わり夜明けが近かった。