天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
月影は反撃せずただ無表情で紅蓮を見つめた。
幼い頃から月影を知っていた。
初めて月影が魔宮に迷い込んだ時、やせ細っていてとても皇子には見えなかった。
同年代で自分よりも法力が高い者がいることに酷く驚いた覚えがある。
それから新月には食事に招くようになった。法術を二人で学び、知識を共有しお互いを高めあった。
二千歳のとき皇子でありながら成人の儀もしてもらえないと聞き私が儀式を行ったのだ。
成人すると新月の飲み物は酒に変わった。
冗談を言い、ふざけあい、よく笑った。そして天界の話を聞き私はよく怒ったものだ。
だが、彼はいつでも優しく誰の事も責めなかった。
そんな親友が私の実の母を殺したのだ。
今の月影は天帝としての立場がある。
天帝だから魔后である母上を殺した…上に立つ者は私情を捨てなければならない。月影のやったことは天帝としては正解なのだ。
紅蓮は遣り切れない思いだった。片手に宿した紅蓮業火がゆっくりと月影に狙いを定める。