天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~


…ここにはいられないわね。


侍女が皆、下がり一人になった白蘭は天后宮には入らず飛び立った。


向かった先はいつの日か連れてきてもらった月影の宮だ。


ここは天宮から遠く離れている。侍女は誰も近づかない。


ここなら静かに過ごせるわ。


宮の主が離れたからか酷く寂しく見える。


中に足を踏み入れると、庭にある鈴蘭だけが綺麗に保たれていた。


そしてその庭には懐かしい人物がいた。


「兎月…?」


庭から見える二つの長い兎の耳。


< 83 / 258 >

この作品をシェア

pagetop