天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
…ここにはいられないわね。
侍女が皆、下がり一人になった白蘭は天后宮には入らず飛び立った。
向かった先はいつの日か連れてきてもらった月影の宮だ。
ここは天宮から遠く離れている。侍女は誰も近づかない。
ここなら静かに過ごせるわ。
宮の主が離れたからか酷く寂しく見える。
中に足を踏み入れると、庭にある鈴蘭だけが綺麗に保たれていた。
そしてその庭には懐かしい人物がいた。
「兎月…?」
庭から見える二つの長い兎の耳。