天空の姫Ⅲ ~二人の皇子に愛された娘~
声をかけると驚いたのか兎は跳ねて、こちらを見た。
「…白蘭?」
「兎月…私よ」
天界で唯一、兎月だけは変わらず以前のままだ。
白蘭は喜び、天界に来てから初めて笑顔を見せた。
手を広げて兎を呼ぶと兎月は目を潤ませて白蘭の腕に飛び込んだ。
なぜ、こんなところに独りでいるのか。
月影と喧嘩でもしたのだろうか。
「兎月は相変わらず泣き虫ね」
「…白蘭だって相変わらず生意気だ」
その小さな兎の体を撫でた。
「ずいぶん寂れたわね…ここも」
「私がもう少し法術が使えたら良かったんだが…だが、見ろ!白蘭!鈴蘭だけは頑張って世話したぞ!」
「本当ね」
「兎月は頑張ったのだ!」
胸を張る兎月に白蘭は笑った。