ディープ・アフェクション
とりあえず机の上に置いてあったティッシュボックスからティッシュを数枚引き抜き、手渡す。それを受け取った里茉はすぐさま鼻元にそれを当てた。
「なに泣いてんだよ」
「だってぇ~…めちゃくちゃつらいじゃん、この話し…」
「…そうか?」
ただ付き合ってたカップルが別れただけだろ、と思う俺は少し冷めているんだろうか。
首を傾げた俺に、里茉は赤く充血した瞳を向ける。俺が泣かせたわけじゃないけど、胸がチクリと痛んだ。
滅多に見ないからこそ、俺は里茉の涙には滅法弱いと思う。
「だって、二人とも一緒に居たいからちゃんとした職に就いて、仕事頑張ってたんだよ?」
「うん」
「ずっと一緒に居たくて頑張ってたのに…なのに別れちゃうとか、つらいじゃん~…っ」
クリっとした里茉の瞳から、大粒の涙がポロリと零れ落ちる。見ていられなくてその雫を指先で拭うと、里茉はずずっと鼻を啜りながら言葉を続けた。
「私達も数年経てば就活して、お互いに仕事するようになるじゃん?」
「うん」
「その時、もしこの映画みたいになっちゃったら…って思うと、すごく…つらい」
その言葉に、涙を拭っていた指先がピタリと止まってしまった。
里茉が伏せていた目を上げる。涙で潤んだ瞳が真っ直ぐに俺を見つめていて、胸がぐっと苦しくなった。
「…皇明は、つらくない?」
その質問に何か言葉を返すよりも先に、身体が動いていた。
まるで覆い被さるようにその華奢な身体を抱きしめた。「っわぶ、」と間抜けな声を出した里茉は俺の胸にぶつかるように収まり、数秒後、おずおずと俺の背中に手を回した。
「…皇明?」
不思議そうな声が俺を呼ぶ。けど、それに応える余裕は持ち合わせていなかった。