今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。

「ふふふっ。これならお弁当も美味しく食べれそう」

本当に嬉しそうだ。

天音の笑顔は、とっても可愛いからめちゃくちゃ好き。


ベンチに座り、俺はクリームパンを取り出してもくもくと食べ進める。

……うまい。

やはり“天音と食べている”という事実がうまさを引き出している。


「久遠くん、それだけで足りる?」

「ん」


別に腹が減ってるわけじゃない。

ただ天音と話したかっただけだった。


「ほ、本当かなぁ?久遠くん細そうだしっ……よければ、私の卵焼きとタコさんウインナー食べる?上手に焼けたんだっ……!」

「え?いいのか?」


まさかの言葉に驚きが隠せない。

こんな幸せなこと、あっていいのだろうか。


「うん!もちろんだよ!!」

「……じゃあ、もらう」

「あっ……えっと……お箸っ……」

「そのままでいい」

「へっ!?」


天音と間接キス……?か、これ……。


「わ、わかったっ……!は、はいあーん」


……幸せすぎて、死にそうだ。

天音はふわふわの卵焼きを俺に食べさせてくれた。


「……!めっちゃうまい……」

「本当っ……!?よかった……!今日は、いつもよりうまく巻けたんだっ……!!」

「天音はすごいな」

「?そうかな……?でも、ありがとうっ……!!」


はぁっ……本当可愛い。

どうかしてんだろこの可愛さ。

天使だ。

天使とは、まさに天音のことを言うんだろう。


「あっ……!私、お腹空いてないし、久遠くんよかったら私のお弁当食べる?」

「いや、さすがにそれは」


天音が心配だ。

ただでさえこんなにちっちゃい弁当なのに。


「あっ……嫌だった……?」

「っ……ちがう」


なんだよその目。

俺だって食いてぇよ。

ってかもういっそのこと天音を食べたい。
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