今日も久遠くんは甘い言葉で私を惑わす。

可愛い。

「……お前の腹も心配だから……一緒に食おう、な?」

「あっ……!う、うんっ……!!」

どこまで愛らしければ気が済むのかわからないけれど、俺は天音と幸せに弁当を食べた。


弁当を食い終わって、しばらくベンチに座っているところだった。

誰かがすごいスピードで走ってくる音がしたのだ。

「く、久遠くんっ……!なんか、騒がしくない……?」

「ああ、そうだな」

……天音、怯えてる……。

可愛い……でも、俺に怯えて可愛い顔をしていないのは許せない。



ガチャン!!

「上杉久遠!!お前に決闘を挑む!!」

そう言った輩が十数人いた。

「……すまない天音」

「?」

「俺はコイツらを殺らなくてはならない。だから、先に教室に戻っててくれ」

「わ、わかったよっ……!久遠くん、一緒にお弁当食べてくれて、ありがとう……!」

「……こっちこそ」

どれだけ律儀なんだよ可愛い。

それから天音は屋上を出て行った。

「なんだよてめぇら」

「っ……お前、いい加減天使さまに手を出すのやめろ!!」

「そうだそうだ!!お前が不良だろうとなんだろうと、俺らの天使に近寄るな!!」

あー……そうだそうだ。

こういうヤツらは潰された方が絶対いい。

だが、人数が多い分潰せるヤツは少ないな。

仕方ねぇ。
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