最強守護騎士の過保護が止まりません!~転生令嬢、溺愛ルートにまっしぐら!?~
 どうしたらいいかわからない。
 気が付けばセシリアはアルヴィンの腕の中で、声を押し殺して泣いていた。
 急に蘇った記憶に、ヒロインたちに憎まれ、倒されるという自分の立場に、どうしたらいいのかわからなくなっていた。
「セシリア……」
 アルヴィンは宥めるようにセシリアの名前を呼んで、抱きしめてくれた。
「大丈夫だ。何があっても俺が必ずお前を守る」
 だから、泣かないでくれ。
 そう懇願されたのに、その優しい声に、包み込むように抱きしめてくれる腕に、ますます涙が止まらなくなってしまう。
「……ごめん、なさい。わたし……」
 この涙の理由など、アルヴィンはまったく知らないのに、それでも守ると言ってくれる。
 こんなにも大切に抱きしめてくれる。
 その事実が少しずつ、セシリアの心を落ち着けてくれた。
 よくよく考えてみれば、今のセシリアは「悪役令嬢」だったセシリアとは、大きくかけ離れている。
 両親や兄に愛されていないことなど、もう知っている。
 それでも傍には常にアルヴィンがいてくれるから、孤独を感じることはない。
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